2007年04月21日

「建物が巨大化する」とは、どういうことか

オフィスビルや高層マンションなどのように、「床を積層させる」ということはある意味、土地を人工的に生産する方法です。国家的視点でみれば、「国土の拡張」とも言えます。
エレベーターはさながら高速道路や幹線道路のように土地と土地をつなぐインフラといったところでしょうか。


有名なビルを例に挙げて、「建物が巨大化する」ということを考えてみたいと思います。
アメリカのシカゴにあるシアーズタワーというオフィスビルがあります。

高さは500mちかくあり、床面積は42万uもあります。
(東京ドーム9個分、あるいは日本の一戸建てが建つ土地面積を100uと仮定すると4200軒分の土地面積!)
その他にも
・階数 110階
・収容人数 11000人
・エレベータは 104基
・トイレ 943個
・配管総長さ 40000km
・電話回線距離 69000km
・荷物搬入のためのトラック 175台/日
・店舗面積や設備用の床 10000u


といったデータがあります。
わずか一辺が70mの正方形の建物ですが、気の遠くなるような量ですね。
まるで小さな街を示すデータかと思うほどです。
(立方体も一辺が2倍になると体積は8倍になるので、大きくなればなるほど、それを満たすための要素は等比級数的に増えていきます。)


データから読み取る限り、巨大さを支える「量」が、都市的な「質」を帯びているように見えますが、具体的にはどうなのでしょうか。


・建設に投資する額も大きいだけにテナント利用率が問題になってきます。
テナントの利用率に関して小さなビルと異なるのは、巨大なプロジェクトであるほど多様性を確保する必要性が出てくるということが挙げられます。
1万人以上収容するということは様々なジャンルの飲食店や店舗が入っていなければならないですし、小さい会社もあれば大きい会社も入るので、様々な広さの床を設定しなければなりません。実際このビルには理髪店、整体、歯医者さん、観光客用の土産物屋さん・・・・いろんなお店が入っています。

マンションの場合はどうでしょうか?
私が関わったことのある100m超のマンションでは住戸タイプが42種類もある物件がありました。
いろんなタイプの人が選べるように、ということですね。
同じ住戸が重なっていて、しかも家賃設定が同程度であれば、かなり似通った層の人が集まるわけで、むしろその方がいいのでは?という考え方もあります。
しかし、マンションなどは立地で選ばれるということもあり、一つの建物の中にも様々なタイプの部屋を用意する方が全体としてみると売れやすいそうです。「あの場所は便利そうだな」といろんなタイプの人が考えるということみたいです。
(・・・プランを考える方としては苦しい。売り出し文句が派手になるほど苦しい。。。なんで42タイプも・・・。泣)

経済的な合理性を確保するということは、「巨大さ」においてはいろんな意味で多様性を確保することと同義だと考えてます。
(土木的な巨大さや、工場などはまた話が違うとは思うのですが。)


・建物が巨大化するとリスクも高くなっていきます。
例えば平屋建てが火事になった場合、そのまま消防員が救助に入れるのに、2階建てになるとはしご車が必要になりますよね。もっと高層になると、はしごが長くなるのでクルマを安定させるためのアームを確保するスペースが必要になってきます。
避難する人が何千人にもなる、ということは一気に一階に人が押し寄せるということであり、避難スペースも考慮に入れなければならないでしょう。
また、これらのリスクを回避するための設備投資や警報システム、さらには、恒常的なメンテナンスも必要になってきます。

(一定の高さを超えるとヘリポートを設置しなければならなかったりします。)


人や物を集積させるということはリスクを集積させることと同義です。
大きくなればなるほど、リスクも高まっていきます。
9.11のテロはそういうことを象徴しています。
また、サリン事件は都市的な密集レベルを前提として企てられたテロでした。


・巨大化するということは人工的に環境を制御する必要性が出てくる、ということでもあります。
風は地面から離れて高くなるほど強くなりますから、高層階ではなかなか窓を開けることが難しいと考えられます。・・・窓を開けるたびにビル風が吹き込んだのでは仕事になりません。
また、外側の部屋と内側の方では絶対的な環境の差が生まれます。
ここら辺も小規模の建物と違うところです。
太陽の光は入りにくくなりますし、外側で窓を開けたとしても新鮮な空気が流れ込みにくくなりますから、人工的な空調や照明に頼ってそれらの差異を極力解消していかないといけません。
都市もまた人々が自然を排除して密集した結果、人工的に公園を作り出して生活環境を整えているのと似ています。


・巨大になるにつれ、あらゆる要素をシステマティックに動かしていく必要があります。
一軒の家ならそこで生活する人がゴミ処理や掃除をするのは当たり前ですが、中規模の建物ならメンテナンス契約をして清掃のサービスを外注するでしょう。
さらに巨大になっていくとそれらの仕事は細分化して、きちんとした役割分担をしていかないと、建物として機能していかなくなります。
オフィスで働く11000人全員が一斉に掃除したり、ゴミ出ししたり、警備に当たったり、・・・ということは混乱を招くだけです。また、生産性も落ちてしまいます。


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これまで見てきたように、建物が巨大になるほど、それを構成する要素の「量」の過多によって、一つの街や都市のような性質を帯びてくるのがわかります。

今日、日本では都市計画を打ち出すことにあまりリアリティがありません。しかし、だからといって都市計画的発想が社会的な意味を失ってしまった、ということにはならないと思います。
巨大な建物では、そのような都市的なレベルのアイディアを試せるのではないかと思っています。


posted by Rio Kurosawa at 18:09 | Comment(0) | TrackBack(3) | 思考記録
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