2016年03月24日

おばけの出る空間

建築家と呼ばれる人は、「空間」というなんだかよくわからないものを相手にして日々格闘している。

お客さんに空間の効果を説明してもぴんと来ない方も多いので、

模型やパースを使ってなんとか伝える努力をするポイントでもある。

ところで空間とは、どのような効果を持ちうるのか?



ソースを思い出せないがこういう話を聞いた。

東南アジアの村では古くから妖怪の言い伝えやお化けを見たという話が絶えなかったが、あるときからぷっつりとそういう話が出なくなったとか。おそらくは民俗学者か社会学者だと思うが、それを不思議に思って、いつからそのような話が途絶えたのか調査したところ、ある年に行き着いた。それは村に「電気が開通した年」だったのだそうだ。

  

面白いね。


もちろん村が明るくなって「お化け」が逃げたわけではないだろう。

明るくなって人間の妄想が消えたと考えるのが妥当ではないか?

至る所が明るくなると、空間に対してイメージや妄想を引き起こす余地が無くなるからだ。

動物の鳴き声が響く、森の闇と静寂、そして湿った空気が、妖怪やお化けの「言い伝え」を生み出してきたのだと想像できる。つまり、空間が人間に対して「特定の感覚や想像力を引き起こした」といえる。



例えば不吉な感じ、恐怖を感じる空間、ただならぬ気配を感じる空間・・・・、

確かにそういう空間経験は誰にでもあるだろう。

世界各地にある幽霊などの話は、空間がもたらす効果に起因すると私は考えている。



・・・ということは逆もあり得るのではないか?



例えば

幸福感を感じる空間、

心が弾んでしまうような空間、

気持ちよくて、うとうと寝てしまうような空間・・・


これらをイメージに基づいてそれらしく作るのではなく、方法的に作るのは難しい。物件ごとに条件が変わるため、一定のマニュアルがあるわけではないからだ。しかも選定した一つ一つの要素の膨大な組み合わせ数が生じ、その個々に対して美的判断、合理的判断を下していくため、決定ポイントの見極めも難しい。


しかし不可能ではない。これは設計者の空間体験の量によって決まる部分が大きいと思う。

posted by Rio Kurosawa at 15:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 思考記録
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