99%のデザインというのは最近出てきた考え方だ。
一部のお金持ちや特異な人たちを対象とした、いわゆる高尚なデザインではなく、それ以外の人たちを対象としたデザインだ。
例えば発展途上の貧困国に対して、農耕によって生計が立てられるようにするべく、簡単に井戸水をくみ上げられるような道具をデザインする、といった文脈で使われる用語だ。お金になりにくそうなのが難だが、とても意義深い。私もこういう仕事をしてみたいなと思う。
ロングテールという言葉を知っている人は多いと思う。
めちゃくちゃ売れているメガヒット商品は全体の割合からすると上部数パーセントで、それ以外の商品は指数関数的に割合が減っていくというものだ。それが恐竜のしっぽのような形のグラフを描く。それでロングテールというわけだ。
インターネットの発達によって、メガヒットを狙って利益を得るのではなく、残りの(下手したらほとんど売れない)商品を囲い込んで利益を得るモデルである。アマゾンなんかはその最たるモノだろう。
なにが言いたいかというと、メディアを賑わすような新奇性は、従来はデザイナーが目指すべき領域のように教育を受けた。しかし上部数パーセントを占めるような特権的な領域を目指すモノだった。
でもそうじゃない。・・・ということが言いたかった。
私は個人事務所をVITという法人にした。
VITAL=生命力ということだが、すべての「人」を対象としたデザインを展開したいからだ。
人が生き生きとするような空間を目指したい。
もちろん時には、いわゆるお金持ちを相手にプレゼンすることもある。でもその人もまた「人」だ。
だからそんな身分(?)や立場、資金力に関係なく、普遍的に納得してもらえるようなロジックを限界まで突き詰めたデザインを展開したい。
そういう意味で100%のデザインだ。
そんなことは不可能かもしれないが、同じ状況であなたならどうする?と1000年前と1000年後の人間に、いつも問いかける。
(私の個人的な1000年だが)